まったく洒落っ気の無い私だけれど、時々、若い女の子たちのお店を覗く。どれも安くて、可愛い。そうやって、つい購入してしまったヘア・アクセサリーをバックの中に忘れていた。英会話の宿題をやらねば、とテキストをゴソゴソやっていたら、ポロっと出てきた。
「見て。見て。可愛いでしょ?」
アイボリー色の薔薇の形をしたそれは、私には似合わないが、上品。ダンナ、「どうせなら3つ全部、頭に付けておいたら?」
「そうだ!オイちゃん。お前だってオンナのコなんだ!」
しまった!と思ったが、時すでに遅し。
「オイ、お前、付けてみろ!きっと可愛いぞ〜」
ダンナ、私からアクセサリーを奪おうとして床に落す。
足元で丸まって寝ていたオイ、自分の名前を呼ばれムクッと起き上がる。
「あれ、持って来い!」
プラスチックのような硬質のものは、咬むのが嫌いだろうて、どうせ無視するだろうと踏んでいたら、オイ、律儀にテーブルの下から咥えて出てきた。私、怒りを押さえながら、テキストを読む振り。
「そうだ、よし。こっちに持って来い!」
呼び込むダンナの横を、オイ、素通り。自分の敷物の上にそれを落とし、ひっくり返って背中に擦り付けて大興奮し始める。
「そうか、嬉しいのか、オイ。こんなに喜んでるぞ!良かったなぁ〜」
ダンナは喜ぶが、オイ、そんなの聞いちゃいない。口を開けて、標的のアクセサリーが、ちょうど首に当たるようにズルーっと滑りながら、恍惚。
ダンナ、更に調子に乗って、オイのタテガミにアクセサリーを留める。オイ、歌舞伎の獅子舞のように頭を振り回す。これにはさすがに、黙っていられなくなり
「やめなさいよっ!」
いきなり落ちた雷に肩と口をすぼめてダンナ
「やめなさいよっ!だって・・・。オイ」
思えば、オイも“多動の犬”であり、ダンナもかつて“多動児”であった。机に向かってジッとしているのが何よりも苦痛だったと今でも言う。それで引き寄せ合うのか、ダンナとオイ、まったく心通わせない関係ではあるけれど、お互いの利害関係が妙なところで一致する。
「・・・・・・。 さっ!会社に戻るか」
いたたまれなくなったのか、突然の昼休み終了宣言。見送りに向かう私の横を、すかさず歩調を合わせてから歩き出すオイ。
人を知り、人それぞれに応じ分けを学んだ犬と、万感の思いで歩く。